MISSION 3 探索篇
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【MISSON〜探索篇】

(1)終戦――地球へ向けて

 「地球だ‥‥」
 メインパネルに広がるその故郷の惑星。これをそれほど懐かしいと思っ
たことはなかった。
 第一艦橋に駆け込んできていた四郎は、入り口近くからそれを見守って
いた。
真田が笑いながら「お前の兄貴や山本もしょっちゅう駆け込んできてたな、
古代はまた戦闘班みうちには甘いから――」と苦笑していた。
 高性能のパネルは、一足先の映像を捉えて映し出す。視認と錯覚させる
ような景色が広がり、状況を的確なタイミングで伝えていく 相原通信士さん
声だけが、声もなく見入るスタッフの間に響いていた。
 故郷へ帰るのが、こんなに懐かしいものだとは――
 この人たちは、イスカンダルから帰ってきた時、ガトランティスを追い越し
て戻ってきた時、こんな気持ちで地球へ向かったのか――切羽詰って、俺
たちが1秒を1分とも思いながらこの艦を待った時、この人たちはこんな想い
で地球へ戻ってきていたのか。
だがあれらの時とは違うから――辛い戦いの果て。艦内に在る、ほとんどの
者が――待つべき人の、生き死にのわからない人を残してきているから。
 そんなことを思っていると、目の前にいた山崎機関長が、俺の気配を察し
たのか、振り返って笑った。あぁこの人も、俺たちと一緒にずっといた。地
球はもう1年以上ぶりなのだ。

月ライン

 緊急通信が入り、一気に緊迫した空気となったあの時。自分でも気づか
ないうちに格納庫へ飛び込み、緊急発進しようとしていた。気づいて追って
きた同期生たちを振り切り、強引にハンガーをまわそうとして、真田さんに
阻止された。
「脱走は、銃殺だぞ――」と言われて。コスモガンの光が、目の前を通過
し、愛機の操舵板の直前を抉った。
 そうだ。
 もちろん、俺だけじゃない――。
 真田さんだって。
 親友の、古代参謀。澪のお父さん。――そして、独り身だとばかり思って
いた真田さんの、大切な女性ひと。 誰もがどれだけ心配だっただろう。今すぐ
飛んで帰りたかったのは、古代さんだけじゃない。俺だけじゃない。
 だが。
 あの人は月基地にいたはずだったんだ――もし。もしものことが。
そうしたら俺は、どうしたらいいんだ――知りたい。最悪の事態でも、
ともかく、知りたい、本当のことを。

 そんな気持ちを抑え、全員が、ただひたすら護りたいもののために戦った
短期決戦。ユキさんの無事と、地球の無事が知れて、胸をなでおろしたのも
束の間。
 彼女の情報は、皆無だった――。

 デザリウムから引き返し、澪を失って――。それぞれが、それぞれの想い
を抱えて、自らの心と戦いながら向かう帰路だった。
ひたすら戻ればよいだけの、途だった。

月アイコン

 「古代艦長代理さん――」
古代進は、戦闘機隊長・加藤四郎に呼び止められた。
「なんだ、加藤か」
一度戦いを共にすれば、その心は結ばれ、互いの信頼はつむがれていく。
宇宙そらに上がり、共に敵の光芒の中、 同じ隊で飛べばなおさら。
 そして盟友だった友――島や、真田さんとは別の意味で、俺に最も近い
場所にいた加藤の、その弟。顔立ちだけでなく、その魂の潔さを受け継い
だ、真っ直ぐな若者――今は全幅の信頼と、そして愛情を。この年若い
友人に抱いている古代である。

 なんだ、という笑みがとても優しい気がして。傷ついた古代さんに、これ
以上何かを背負わせたくはないけれども。
「あの」どう話したらいいのだろう――。
なんだ早く言えよ、遠慮するなんてお前らしくないなと。
「佐々、さんを。ご存知でしょうね――」
 え、と古代の目が見開いた。意外な名を聞いたというように。――そして
ふと腑に落ちたように、あぁ、とつぶやいて。
「あぁ。知っている、なんてもんじゃない。あれは、加藤や山本と同じ。俺に
とっては、大事な――仲間だ」
 ガミラス戦を生き抜き、ガトランティスのわずか19名の、生き残りの1人。
この戦いにも乗る予定だったと真田さんから聞いた。乗れなかったから、
心配している――。
 ユキさんのことで正直、頭がいっぱいだっただろうと責める気はない。
そうでなければ、とうに、きっとこの人にとっても、あの人は大切な人なのだ。
同じ時空間の中で、共に飛んだ仲間として。
 もうそれで、俺の言いたいことはすでに知れている――そう思ったけれ
ども。言わずに済ますにはあまりに辛かった。
「月基地に配属になっていたはずなのです――内惑星をツブしていった、
あの爆弾が――そう思うと――。わかりませんか、生きているのかどうか。
探したいんです、僕は」

 古代は四郎を見た。どこかで見たことのある目だ。あぁそれは、自分が
きっとそういう目をしていたのだろう、ユキを捜し求めていた時に。母を
父を、求めていた時に。
「佐々を、知っているのか――」
「イカルスの前に。火星で」教官でした、と。
それだけではあるまい。――古代は理解していた。何かあったのだろう。
この若者をこれだけ必死にさせる、何かが。
 佐々と加藤三郎が愛し合っていたことを、古代は知らない。だが三郎の
想いがどこへ向けられていたかは、推察していた。佐々にしても――彼女が
山本と三郎とのどちらを愛していたのか、今となっては知ることはでき
ないが――自分がユキを愛しながら、そばに居てやることもできなかっ
た――だから三郎の、自分を置いて、自分を越えて使命に、目の前にある
ことを遂げていこうとする心根はわかっていたつもりだったから。
 そしてその弟が。四郎は、彼女を愛してしまったのか――。佐々はさぞ
辛かったろうな。
 そして俺にとって彼女は、大切な仲間だ。ユキの親友でもあり、仲間で
あり友である、女である前に。加藤三郎が俺に託していった、命の一つでも
あったのだから。――大切な友。
――今まで頭の中に浮かびもしなかったことを、己れを、恥じた。
「加藤、ありがとう――俺も心配だ。探してみるよ」
 礼を言われる立場ではない、と思いながらも。古代さんなら、情報を得る
方法はあるだろう。少なくとも、あれでやられたかどうか、どこにいるか。
知りたい――だが怖い。もしも。もしものことがあったら、俺はどうしたら
よいのだろう――まだ始まってもいない想い。
澪を護れなかった、だからこそ、あの人を護りたいから。

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