姉妹

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イスカンダル暦3655年

悪しき者 宇宙よりきた
侵略の限りを尽くし 大地の恵みを奪わんと欲す

双子星ガミラスの総統いわ
その恵み守らんがため 我が星が加勢するなりと
かくてガミラス 悪しき者撃ち払い
イスカンダルより妻をめとり 同盟は長く続けり

我が星こそ平和の光
女王立ちて 星々に呼びかけり
12の星 賛同し、惑星の連盟を成し
大使たちこの地に集い マゼランの平和願う


moonライン


 侵略に怯えるばかりだったイスカンダルは、ガミラスとの同盟を機に永世中立
を宣言し、賛同する星々を集めて惑星連盟を立ち上げたのである。
12の星の大使はイスカンダルに駐在し、共に平和を願う団体として名乗りを挙
げた。イスカンダルを攻撃すれば、12の大使の星をも敵に回す事になる。大使
たちはイスカンダルにとって友好の使者であり、人質でもあったのだ。
しかし、この連盟が出来て以来、イスカンダル周辺で物騒な話は聞かなくなった。
確かに有効な手段だったということになるだろう。

 翌日早朝からサーシャは忙しかった。
人民が減り、惑星連盟の主催国としての機能はなくなったイスカンダルだが、サ
ーシャはかつての連盟国に向けて協力を要請した。ガミラスの暴挙を止めたい。
何の理由も無く突然攻撃される地球を救いたい。
夕べだけで、何発の遊星爆弾が地球に落ち、どれほど地球人の命が奪われた
だろう。未知の星からいきなり攻撃を受けて、地球の人々はどうしているだろう
と考えただけで眠れなかった。なんとかしなくては――。まして、あのデスラーは、
イスカンダルのために地球を侵略するのだと言った。それは暗に、イスカンダル
は高みの見物をしていればよいというのと同じだ。サーシャにはそんな事は我慢
ならなかった。
 血が濃くなりすぎるのを避けるため、ガミラスとの婚礼は一世代おきに行われ
ている。デスラーの祖母はイスカンダルから嫁いで行き、デスラーの母はガミラ
ス人である。デスラーの妻はイスカンダルから――。そのしきたりの最も有力な
花嫁候補が自分である事を、サーシャは充分に理解していた。
 しかし、理解していても承服できるかといえば、それは無理というものだろう。
サーシャが生まれた時、既にイスカンダルに男性はいなかった。初恋も知らず、
そんな暴君のところへ「はい、嫁ぎます」などと、絶対に言いたくは無い。
それに―――、サーシャはデスラーが自分よりも姉スターシャを好ましく思って
いることに気が付いていた―――。だからといって、姉が嫁げばいいなどとは微
塵も思わなかったが――。
 最初にガミラスへ嫁いだ姫を送り出す時、時の女王は「貴女の明るさと優しさ
が、ガミラス人の獰猛な血を和らげるでしょう。多くの子を成し、その子らに平
和の尊さを教えなさい。憎悪を遠ざけ、野望を砕き、愛する人に育てなさい」と、
娘を抱きしめて言ったという。それから、イスカンダル王室の女性たちはその言
葉を使命として語り継いでいる。
 私に与えられた使命も同じだ。けれども、嫁ぐにはまだ早い。
今私に出来る事は何だろうか。サーシャは懸命に連絡を取り続けた。

 一方スターシャは、イスカンダルのデータバンクでコンピューターに向かって
いた。地球という星に、どのくらいの人口が住み、どのくらいの科学レベルがあ
るのか。軍事力はどうなのか。そこに住む人種はどんな思想と生活習慣を持つ
のか――。ガミラス軍はもちろん調査の上で攻撃しているのに違いない。なんと
か地球を救う手立ては――。コスモクリーナーを送ろうにも、転送システムを動
かせる科学者はいない。運べる長距離艦を動かす人員もいない。
星の衰弱を受け入れ、運命に身を任せるつもりでいたスターシャは、己の力の
無さを今更ながら嘆き、祈っていた。

moonアイコン
                
 無情に日々は過ぎ、スターシャもサーシャも黙していることが多くなった。サ
ーシャは自分用の宇宙船を使って、何度も元連盟国を訪ねた。大使としての訪
問は、以前から行っており、どの星もサーシャを丁重に迎えてくれたが、ひとつと
して、地球救出に手を貸そうと言ってくれた星は無かったのだ。
なんの利害も無い地球を救う必要はなく、滅びようとしているイスカンダルにも
興味はない。第一、宇宙の脅威となっているガミラスに敵するなどというばかげ
た考えを支持する星は無くて当たり前だった。
 サーシャは失望し、苦しんだ。毎日地球のことだけを考えていた。始めのうち
は地球人をからかうように、何ヶ月かに一度遊星爆弾を投下していたガミラス軍
は、最近になって攻撃回数を増やしている。
ガミラス本星の酸の濃度が上がり、デスラーが移住にむけて本格的に動き始め
たらしかった。スターシャの計測では、地球人類が地下で生き延びる限界まで
あとおよそ1年半。それなのに、手をこまねいて見ているだけなんて―――
「嫌。そんなの、絶対に嫌よ」
無駄に踏みにじられてよい命など、あるはずが、無い。

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