デスラーという男は、まるで獰猛 な猛禽類のようだ。その鋭い眼差しは狙った 獲物を捕らえるや、決してあきらめる事をしない。尖 った鉤爪で獲物をつかみ、 くちばしで引き裂いて喰らい尽くす。目的の獲物を求めて、強く大きな翼で遠く まで飛びつづけるのだ―――。 ガミラスは好戦的な星で、その名は数々の歴史的宇宙戦争の中に刻まれて いる。星自体の産業に乏しく、肥沃 な大地を持たないガミラスは、ただ一つの特 産物ガミラシウムを利用して軍事拡張を繰り返し、他所で戦争があるというと、 傭兵として参戦した。戦略に長け、その給金と報奨金で十分な国力を備えてか らは、他の星を侵略する事で勢力を広げてきたのだ。だが未だに移住するほど 条件のいい星に巡り会っていなかった。 「おやめなさい、デスラー総統」 いつもの女王たる威厳を持って、スターシャが言った。 「我がガミラスはイスカンダルの友好国だ。未来の無いイスカンダルのためにも、 あの星が必要なのだよ。いつもイスカンダルのために手を汚すのがガミラス星の 友好国としての証――。私はそれでいいと思っている」 デスラーの視線は、スクリーン越しにまっすぐスターシャを見詰めた。 「イスカンダルのために、ガミラスは手を汚すと言うの!?」サーシャはまだ怒り がおさまらず、噛み付きそうな勢いでスクリーンを睨んだままだ。 何百年も昔、イスカンダルは侵略にさらされていた。 イスカンダリウムと、豊富にあるダイアモンドを求めて、何度も戦争に巻き込まれ、 多くの血が流れたのだ。 イスカンダル人は圧倒的に女性の多い民族で、戦争を好まなかったため、壊滅 的状態にさらされていた。そんな時、双子星ガミラスが同盟を申し出てきたの だった。 その好戦的性格のせいなのか、ガミラス人は男性が多く、皇室は花嫁選びに 窮 していた。政略結婚を条件に、イスカンダルの盾となろうという申し出に、時の女 王はそれを呑み、二つの星の同盟が成立したのだ。 「私はイスカンダルを大切に思っているのだよ。我が祖母はイスカンダル王室か ら嫁いで来た。この身にイスカンダルの血が流れているのだから、当然だろう」 デスラーの物言いには余裕があり、それが更にサーシャの気持ちを逆撫でした。 「イスカンダルは平和を望む民族なのよ!あなたにもその血が流れているのだ から、お分かりなんじゃありませんの!?」 「サーシャ姫。君はまだ若いから民族の大切さがわかっていないのだ。移住して 新しい生活が始まれば、きっと君は私に感謝するだろう。今は理解してもらえな いのが残念だがね…」 スクリーンの向うでデスラーは操作パネルのスイッチをひとつ入れた。 「デスラー総統」 敬礼した姿勢の男がスクリーンに浮かび上がる。その風貌は美しさを好むデス ラーの側近とは思えぬほど奇怪だが、家柄から言えば副総統という地位が当然 のヒスであった。 「ヒス。攻撃の準備は出来ているな?」 「はっ!いつでも仰せのとおりに」 にやり、とデスラーが笑い、ゆっくり唱えるように 「地球に向けて、遊星爆弾を発射せよ」と命令を下した。 ヒスは直ちにガミラス軍冥王星前線基地司令シュルツに命令を伝える。 「やめて!!」「デスラー!おやめなさい!!」 二人の女性の悲鳴に近い声は、シュルツの「遊星爆弾発射!!」という復唱にか き消された。 冥王星からおぞましき姿の遊星爆弾は地球めがけて突進してゆく。 オレンジ色に燃え上がりながら大気圏に突入し、大地に突き刺さって目もくらむ 閃光が走ると、地表は膨れ上がったように見え、地響きとともに爆発し、全ての 物を溶かすように破壊した後で、大きなきのこ雲が上がった。 「ふっ…は、はははははは…」 長く尾を引くデスラーの笑い声と共に、ホットラインはぷつりと切られた。 |
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