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 「バカ! 古代くんのバカ!!」部屋に戻ると、ユキはベッドへどさりと倒れ込んだ。
惨めですって!? 沖田艦長の事を本当にそんな風に思っているの!?
 ヤマトに乗艦して以来、まるで兄のかたきのように 沖田艦長を睨みつけていた古代。
ガミラスを親のかたきとして憎み続けていた古代。
しかし、ガミラス本星での戦いを終えたとき、
「我々がしなければならなかったのは、闘う事じゃない! 愛し合うことだった!!」
と自分の横で言い切った姿に、ユキは古代が自分と同じ価値観を持っていると
感じ始めていた。
実際、艦長代理に任命されてからの古代は、統率力があり、人を惹き付ける不思
議な魅力もあって、その人望の強さにユキですら驚いた。
古代進――。
その人は、人類と地球を愛し、人からも愛されているのだと思っていた。
それなのに――

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 佐渡先生が沖田艦長から直接「排泄はいせつに困難がある」 と聞かされたのを知った
時、ユキもまたショックを受けた。
 排泄感があっても、足が弱く、トイレにたどり着くまでに時間がかかるため、
間に合わなくなりそうで不安だと、沖田は佐渡に相談したのだ。
トイレからの帰りに転倒し、ひとりで立ち上がれなかった事も聞いた。
排泄は必ず起こるのだから、ことは深刻で急を要する。
だから佐渡は、艦長代理の古代と、工場長の真田に事実を伝え、対応を話し合お
うと決めたのだ。
そんな自分の状態を、沖田本人が、どう思っているのか…
どんな気持ちで佐渡に相談したのか…
そう考えるだけでユキは泣きそうだった。
 抵抗、あきらめ、甘受。
大きな病気にかかって、自分の力ではどうしようもないと分かった時、それは
誰しも通る苦難のステップだ。
羞恥心と、艦長としての威厳の喪失。全てを沖田はひとりで受け入れて、生きて
行こうと決意している。
それを、惨めだと…古代は言った。
最近の古代は、沖田を父のように慕っていると思っていた。
あんな冷たいことを言うなんて、思ってもみなかったのだ。
「バカ! 古代くんのバカ!!」
ユキは何度も何度も同じ独り言を繰り返し、ベッドの上で苦悶した。
闘っているのよ。沖田艦長は自分自身と闘っているのよ。
生きるために懸命に闘っているのに、それがなぜ分からないの!?
なぜ手を貸してあげられないの!?
ユキの頭の中に、まるで汚いものでも見るように沖田をさげすむ 古代が思い浮か
び、そのあまりの嫌悪感と怒りで身体がブルブルと震えた。
「好きだったのに!」唐突に、口を突いて出た言葉に自分で驚く。
「…好きだった…のに…」
そうか。私は古代くんのことを好きだったんだわ。だからこんなに腹が立って、
赦せないのね。
あんな冷酷な人を好きだったなんて、情けないわ。
もういい。古代くんなんて、もう知らない。
「100年の恋も冷めちゃうわ」
自分自身に言い聞かせるようにそう言うと、枕を壁に向かって投げつけた。
「古代くんのバカ!」
つうっと涙がひとすじ頬を伝い落ちる。
一緒に最善を尽くそうと言って欲しかった。
沖田艦長と手を携えて、一緒に地球に帰ろうと言って欲しかった。
「古代くんなんて大ッ嫌い!!」
ユキは毛布を頭の上まで引き上げ、固く目を閉じていた。

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