告知
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 翌日、第一艦橋へユキがやってきて、古代と真田を医務室へ呼び出した。
なんだろうと二人が医務室へ入ると、そこには難しい顔をした佐渡が待っている。
「佐渡先生、何かご用ですか?」と古代が質問すると、
「ああ、あのなぁ、古代…艦長の具合についてなんじゃが…」佐渡は言いにくそ
うに頭をかきながら古代と向かい合う。
「宇宙感染病から来る歩行困難は、進行が遅いとはいえ、筋肉を衰えさせないた
めに、少し運動とリハビリを行った方がいいと思う」
沖田の足は、すでに痩せてしまっていた。杖による歩行も難しく、歩行器か車椅
子での移動しかできなくなっている。艦長室専用エレベーターがあるので、時折
第一艦橋へ降りてくることが出来るのだが、艦内を視察してまわることは、もう
随分行えなくなっていた。
「それで…じゃ…自分で歩行する事が出来ないとなれば、 排泄はいせつ困難も考えんとい
かん。艦長室にナースコールを設置して、呼び出しがあればトイレまでの移動を
介助する。しかし、夜間はどうするかじゃ…」
真田は腕組みをして、黙ったまま佐渡の言葉を聞いている。
古代はくらくらと眩暈めまいがしてきた。
艦長の足のことは、古代も心配だったし、なんとかしなければと思っていた。
まだ早い…まだそんな歳ではないはずだ…。しかし、排泄困難とは――!
自分の憧れであり、男として尊敬し、父のように頼っている沖田が、そんな
ひどい状態になっているなんて――
 嫌だ、そんなのは絶対に嫌だ!! 胸の内をぐるぐると感情が渦巻いた。
絶句したままの古代と目を合わせることを拒むように、佐渡はちらっと古代を上
目使いで見て、
「当面の応急手段として艦長には尿瓶しびん を渡してある。それにしたって、片付ける
には人手がいるし、排便の時はどうするか考えねばならん。オムツの利用も
含めて、艦長本人と相談が必要じゃ…」
佐渡が、さらに言いにくそうに伝えた時、古代は拳を握り締めて怒鳴っていた。
「オムツですって!? そんなことを艦長が了解するのですか?
そんな…そんなみじめな扱いを受けるくらいなら、 俺だったら死んだほうがましだ!!」
古代が言い終わらないうちに、ぱあん! と高い音がして、目の前が白くなった。
左頬ほほが火ぶくれになったように熱い。
頬をおさえ目を上げると、静かに怒るユキが古代を睨みつけている。
「見損なったわ」
ひとことだけ言い放つと、ユキは古代に背を向け、医務室を出て行った。
重い空気が残った医務室で、佐渡は、呆然とする古代を見ながら、真田に言った。
「……と、まあ、こういう事情なんでな。工作班でナースコールの設置とポータ
ブルトイレの製作を頼めんかのぉ…」
「もちろん、大丈夫ですよ」真田も腕を組んだまま古代を見ながら答える。
「専門外の物を作らせて、すまん」とびるように言う佐渡に、 真田は笑って、
「ヤマトの艦内で必要なものは、工作班が作って当然です。艦長に不自由をかけ
ないためにも、すぐ取り掛かりましょう」と言い、出て行こうとしたのだが、
全く動く気配の無い古代を見つめて、歩みを止めた。
「古代。俺もこの手足を無くした時には絶望した。死んだほうがましだと真剣に
思ったよ。」と、まるで兄のように優しく声をかけ、その肩をぽんと叩いてから
医務室を後にした。

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