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父帝の名代として辺境の植民地惑星を視察していた18歳のデスラー は、到着したガミラスのエアポートで、ドメルと初めて会った。 15歳になったドメルは、仕官として仕えるべく宮殿に上がることに なったのだ。イスカンダル人と同じく、生後わずか半年ほどでこの年齢 になり、そのあとはゆっくりと歳を刻むガミラス人において、このくらいの 歳の差は無いに等しい。ドメルはデスラーのはとこにあたり、その将軍 一族は、忠臣として代々与えられた領土を治めてきた。 信頼の篤いこの一族の少年を、デスラーの父は遊び相手兼武術の 鍛錬相手として選んだのだった。 「こちらへ来い」高速艇から降りて、デスラーは 跪くドメルに言った。 「いいえ。このままここで」ドメルは動こうとしない。 「何故だ。私が来いと言っているのだぞ」 しかしドメルは、やはりその姿勢のままでこう言った。 「これ以上近づきますと、あなた様の影を踏んでしまいます」と。 夕日を背にしたデスラーの影は、ドメルの手前まで長く伸びていた。 デスラーはこの態度に満足し、彼を重く用いる事とした。 デスラーは自分の“人を見極める目”を信じている。ドメルはよき武官 となり、決して自分を裏切らないだろうと、初対面のその時に感じた のだ。そして、その予感は的中していた。常に側に控えて、必要とあれ ば辛口の発言もあったが、篤い忠誠に基づいた冷静な判断は、何度も デスラーを助けたのだった。 いつしかドメルは、“宇宙の狼”と称されるほど功績を上げ、デスラー に最も近く、最も重要な部下となっていった。 「確か……アネッサと言ったね」 デスラーはもう一度、女を見た。 「なぜ城で働きたいと言うのだ。十分な恩賞は与えてあるというのに」 アネッサは再び俯き、 「知りたかったのです」と、言った。 「自宅に戻るたび、兄はいつも貴方さまのことを話してくれました。 私は兄が自分の命を惜しまず尽くした、貴方さまがどんなお方なのか、 知りたかったのです」と答えた。 デスラーはしばし沈黙してアネッサを見ていたが、やがてタランを 呼んだ。 「ご令嬢に軍服を差し上げろ。今日から下女として働くのではなく、 私の付き人として何処へとも一緒に動く事にする。その方が私を知り たいという願いが叶うだろう」 「はい」タランはすぐに部屋を辞した。 「てっきりタランの奥方候補かと思ったが…。確かに私は叶うだけの 願いを聞き届けるようにと彼に命じていた。気の済むまで私を知るが よい」 デスラーが嘘をついたり、自分の言葉を覆す ような人間でない事は、 兄から聞いて十分知っていたつもりのアネッサだったが、一緒に行動 することを許されたのには驚いた。 雲の上より、さらに高い存在の方。 ドメル家では代々、デスラーの一族を神の如く拝して来たのだ。顔を 見ることはもちろん、声を聴くことさえ畏れ多い。と、言い聞かせられて 育ってきた。 だからこそ、兄が召し抱えられ、お側で仕えるということは、一族に とって大きな誇りだったのだ。 それなのに、無礼にも、身を潜めて 城にいた私を咎めもせず、女で あるというのに、一緒に行動してよいと言ってくださる―――。 深く――更に深く傅いて 「感謝いたします」と言った。 「どうぞ、わたくしの事は、名前を呼び捨ててくださいませ」と、 付け加えて。 |
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