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アネッサ付きの下女が、デスラーの部屋を訪れて、温室で彼女が呼 んでいると伝えてきた。 アネッサはあの温室をとても愛しており、よく花の世話をしていることは デスラーの耳にも入っている。 「彼女に呼び出されるなど…初めてやもしれぬ」 デスラーは鮮やかにマントを翻し、宮殿の外れへと向かった。 温室はとりどりの花で彩られていた。 アネッサとここで初めて会ってから、多くの品種が改良され、ガルマン= ガミラスに流通を始めている。デスラーが望んだ、花を愛する生活を、 一般市民も送れるようになる日は、そう遠くないだろう。 一番隅で、アネッサは屈んで植物に水を与えている。 「アネッサ。そんな姿勢で苦しくはないのか」 耳に心地よい低音に、アネッサは微笑みながら振り返った。 「お呼び立てして申し訳ございませんでした。どうしても見ていただきたき 物がございまして…」 大きくせり出した腹部を、かばうように立ち上がり、「この身体では、 運ぶ事が難しかったのです」と、言う。 あの頃のすらりとした身体からは遠のいてしまったが、やがて母に なろうというアネッサを、デスラーは美しいと思う。いつも穏やかに 微笑む人が 傍らにいるというのは、 なんと平和で愛しいものだろう。 「見せたい物とは、なんだね?」 「これです」アネッサは今水を与えたばかりの植木鉢を指差した。 鉢には、緑の双葉がいくつか植わっていたが、双葉というほど若々しい 葉ではない。 だが、その中央には、新芽が見えている。 「これは、何かね」 花も緑も好きなデスラーではあったが、種類や成長については明るく ない。まして、花の咲いていない時には、それが何であるかなどとは 分からなかった。 「これは、貴方が持ち帰ってくださったバラですわ」 それは、二重銀河の衝突を知って訪ねて来たヤマトから贈られた、 白いバラだったのだ。 「挿し芽にしてみたのです。 バラは意外に根が付きやすいのですわね。 もう大丈夫。きっと育つでしょう」 少しいたずらっぽく、明るい色の瞳で、アネッサはデスラーを見ている。 「ヤマトは君の兄、ドメルの敵であろう。 その敵からの贈り物を育て たのか」 驚くデスラーを見て、くすりと笑いながら、アネッサは言う。 「兄はいつも申しておりました。戦争が起これば、当然、敵と味方に別 れる。けれども、双方が、それぞれの信念のもとに闘うのだから、必ず しも善と悪ではないと」 ほう。と、デスラーの目がアネッサを見つめた。 「敵の中にもすぐれた武将がいるでしょう。過去に敵対していた関係の 星だというのに、危機を知って訪れてくれ、花を手向けてくれたのです。 それほどの行動が取れる艦は、尊敬こそすれ、憎むべきではありま せん」 デスラーの脳裏に、古代進の姿が浮かぶ。 若く、青く――、しかし強烈な印象を持った男。 会ったこともない彼を、すぐれた武将だと評するアネッサを、デスラー は関心をもって見た。 アネッサは、双葉を大切そうにそっと撫でて続けて言った。 「兄を奪った戦いは憎い――。けれども、地球人や、ヤマトの乗組員を 憎むのは間違っています。この花は、ガルマン=ガミラスと地球を結ぶ 友情の証です」 話を聞き終わると、ふっとデスラーは微かに笑い、 アネッサを抱き しめて、静かにひとことだけ 「私は、よい妻を得た」と言った。 |
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